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「俺のは?」
「自分で入れれば?っていうか、ホットミルク飲んでも可愛くないわよ。むしろ気持ち悪いわ」
毒舌すぎるだろ…別に可愛さなんて求めてないし。
「で…何か情報はあんのか?とりあえず聞くだけ。良し悪しはそれからだ。良ければ、修理代はチャラだ」
話を元に戻す。
「…最近スラムに流れ者が来たな。そいつが来てから、スラムの人間が何人か殺されてる」
「証拠は?単純に時期が重なっただけじゃねぇの?」
スラムは人の出入りが激しい。ここ、ビリディース領は比較的スラムの治安は良い方だが、他の領はすこぶる悪い。殺人なんて毎日起こってる…皆生きるのに必死だから。
「証拠は無い。だが、ギルドが行方を追っている……帝王からの依頼でな」
「帝王だぁ?領主ってことか?」
この世界は全てが領の体制をとっている。帝王なんざいるはずがない。
「自称スラムの帝王、という意味だ」
「ハッ!笑っちまうな。頭のネジぶっ飛んでんじゃねぇのか?」
俺もスラムの出身だからわかる。徒党を組みリーダーをやる奴はいるが、自らを帝王などと名乗る頭の悪い人間は聞いた事が無い。
「いや、会った事があるが…至ってまともだ」
「とてもまともとは思えねぇな…と、それにギルドが動いてんなら俺らの出番は無いだろ。良い情報とは言えねぇ」
それに、ラッドは嘘をついてる。ギルドがスラムの人間の依頼を請けるとは思えない。たとえ自称帝王だとしても、だ。
「まぁ、会うだけ会ってみるんだな」
「帝王様はそんなに簡単に会ってくれるのかい?こっちは礼儀も常識も無い平民だぜ」
俺の皮肉にラッドは鼻で笑った。
「帝王といっても、『スラム』の帝王だ。それはお互い様だろう。ここに俺の行きつけのバーと帝王の居場所を書いておく。情報が欲しいなら来てくれ、しばらくは格安で売るよ、修理代がわりにな。じゃあ俺はこれで」
何か誤魔化された気がするが…まぁいい。
「…修理代がわりならタダにしろよ」
ドアだったものを見ながら呟く。後で食器棚か何かで塞いどくか。
「さて……おいビンス、それ飲んだら出てけよ。仕事の邪魔だ」
「仕事なんて無いじゃない。子供に見栄張ってどうするのよ」
別に見栄張ってるつもりは無い。変な勘違いしてんなっつーの。
「ラッドが置いてったメモの場所に行って、帝王とやらに謁見しにいくんだよ。待ってても依頼が来る気配もねぇし」
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