去らば日常

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………ゆっくりとした朝を迎えたい。 それが今日、高校二年生になった俺こと、佐川 秋仁(さがわ あきと)が長年、心から願ってやまない願い事である。 季節は春、ちょうど桜が満開の時期であり、新たなる出会いに心を踊らせる。 ………まぁ、それが普通だろうし、そうであるべきであり、個人的に言えばこんな時期から五月病にかかったような願いしかない俺のほうがとんちんかんなのは知ってる。 だが、他人に聞かれたらこう答えるであろう……… 『今日からまた憂鬱な学園生活が始まるから』ってね。 なぜかって? それはこちらが聞きたい。 朝から幼馴染みの女の子と義理の妹に玩具みたいに弄ばれ、学園にいけばプリンセスと名高い生徒会長から雑用を満面の笑みで頼まれた挙句に、学園二大ファンクラブから目の敵にされ学園から家までの全力逃避行。 極めつけにも抜かりはなく朝と同様、二人の腐女子の玩具にされたのち、俺が家の中で安心できる場所、自室に入り鍵をかけて数時間勉強した後、ふとんに入り寝る。 なかなかハードな日常に見えるが、なれてしまえば何とも無い。 ………慣れとは恐ろしいな。
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