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輝政は作戦を提案した。
『単刀直入に申しあげますと…姫路城を包囲し、正攻法で攻めても三ヶ月はかかります。そして、姫路城を守る大将は松平忠輝を筆頭に、藤堂高虎、井伊直孝の三名、いずれの武将も中々の武将です。松平忠輝は血気盛んな武将ではございますが、藤堂高虎がよく諫め、三名はよく守るでしょう。』
すると幸村が…
『ではどう攻めますか?押さば駄目なら引いて見ますか?引いては負けじゃ。』
長政は幸村と輝政のやり取りを楽しそうに見ていた。
『はい。姫路城は私の居城でした。従って、城の隅々を心得ております。本丸と二の丸の間に抜け道があります。抜け道を通りますとこの本陣の奥へと出ます。さすらば、引いたと見せ、陣を少しずつ後退させましょう。徳川方の軍師は藤堂高虎、豊臣方に策あり、と勘繰り追撃はまず無いでしょう。』
秀頼は感心した。
すると、長政が笑みを浮かべながら…
『絵図面での戦はそれで上手く行こうな。だが、あの家康が秘策無しに松平忠輝を筆頭に藤堂高虎などの手だれを籠城はさせまい。輝政殿、家康の情報は?』
『確かに長政殿のおっしゃる通り。所詮は絵図面での戦じゃ。絵図面とは一人では描く事は出来ましょうが、枠にはめて塗り上げる事は出来ませぬなぁ。きら星の如き大将が集う、この状況だからこそ、策は実行出来るのです。それがしには武勇はございませぬ。ですが、それなりの策を練る知恵がございます。』
この老将が描いた策、そして考えは皆を感心させ、長政をも頷かせた。
『試して悪かった。許してくれ。御主の力量を量りたかったのだ。』
長政は笑顔で輝政に頭を下げた。
その輝政から英才教育を受けた光政が将来…
豊臣家の大軍師として常勝無敗の軍団を幸村達から受け継ぐのはまだ先の話しである。
とにかく、輝政の作戦は実行に移された。
幸村は光政に英才教育を施すために、長政付きの小姓にするよう秀頼に願い出た。
長政と輝政は作戦を更に煮詰めるために別陣へ向かった。
幸村は宗茂を伴い…
物見がてらに馬に乗り、姫路城の外濠まで足を運んだ。
二人はふと神戸湾を眺めた。
そして二人は息を飲み込み…
お互いの顔を見合わせた。
加藤嘉明、九鬼嘉高の旗印を先頭に無数の水軍が姫路城へ向かっているのだ。
二人は急いで本陣へ帰った。
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