序章

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男は少年の肩を叩き… 『秀頼様、この山陽道を抜ければ、もう少しで九州です。』 と言った。 すると少年は微笑みながら、 『幸村よ、薩摩までは後、如何程か?』 と問い掛け… 男は… 『いやぁ…それがしも九州は初めてでして…』 『そうか。まぁ気長に参ろう。』 二人は少し笑いながら道を進んだ。 ここで少しばかり人物紹介をしよう。 男の名は真田幸村。 この物語の主人公で以後、幸村と呼ぶ事にする。 誰もが承知の通り… 大阪冬の陣、夏の陣では豊臣方に組し、少数ながらも獅子奮迅の活躍を見せ… 徳川家康の眼に六文銭を焼き付け、恐れさせた智勇兼備の名将である。 少年の名は豊臣秀頼。 この物語のキーマン的存在だ。 以後、この少年を秀頼と呼ぶ。 彼らは大阪冬の陣で燃ゆる大阪城にて死したはずだった。 が、神は歴史を揺るがすほどのイタズラをした。 幸村の死体も秀頼の死体も大阪城からは見つかっていない。 幸村と秀頼は燃ゆる大阪城を後にし… 険しい道のりを越え山陽道に辿り着いた。 途中、数々の修羅場もあったが何とか切り抜けて来た。 だがそれと同時に家来も失った。 ご存知の読者も居ると思われるが幸村には真田十勇士と言われる配下が居る。 その十勇士も今は猿飛佐助、霧隠才蔵、穴山小助、由利鎌之輔の四人。 彼らは別ルートの山陰道から九州入りし、すでに薩摩入りしている。 秀頼の受け入れ体制を整えるためだ。 ともかく彼らの話はまた後ほど… 幸村と秀頼は安芸を越え周防に差し掛かった。 『秀頼様、毛利輝元殿に会いに参りませぬか?』 と幸村が呟いた。 『う~ん…輝元か。懐かしいな。だが会う必要はない。何処に徳川の手の者が居るか分からぬ。佐助達が島津に接触しておる頃よ。我らも先を急ごう。』 幸村は思った。 利発で聡明、家臣思いにして軽率な行動は取らぬ慎重さ。 大胆さにはまだまだ欠けるが… 秀吉公に勝るとも劣らぬ名君になると… 幸村は笑顔で頷いた。 二人は薩摩を目指し旅を続けた。image=130152558.jpg
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