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三人は茶をすすり一服した。
すると輝元の話しが始まった。
『直ぐ様、薩摩入りするのはちと不安で御座りまする。先ず、薩摩入りする前に肥後の加藤清正殿を頼るべきです。清正殿なら必ずや力を貸してくれるはず。実は…関ヶ原や大阪の陣以来、清正殿は落ち延びた豊臣方の武将を匿っているとか…』
幸村は胸の奥が熱く揺さぶられた。
『輝元殿!!落ち延びた武将とは!?』
輝元は話しを続けた。
『聞いて驚かれるでないぞ。島左近殿、長曽我部盛親殿、明石全登殿だ。彼らは清正殿に匿われていると聞いた。清正殿を…彼らを全て味方に付けて、島津を味方に付けるべきだ。』
秀頼も目を輝かせ頷いた。
そして幸村は…
『彼らは皆、徳川に怨みがある将。味方に付くと思います。ですが…私もそうですが、島左近殿、長曽我部盛親殿、明石全登殿、軍を率いる上では一軍の名将。ですが軍師となる将が居ません。』
輝元はまたまたニヤリと笑い…
『心配ない。八丈島の流刑になった天才軍師が居るではないか。』
幸村は興奮し、声を荒げた。
『宇喜多秀家殿!!』
『その通り!!彼を八丈島から助け出し、豊臣の軍師に据えるのだ。』
幸村の頭の中では瞬時に、壮大な天下取りが浮かんでいた…
輝元は…
『肥後までの道中、送る事は出来ませぬが…肥後までの手形と偽の姓名を用意しましょう。毛利の使者として堂々と行かれるがよい。』
秀頼は輝元の手を握り…
『必ずや豊臣の天下を取り戻し、お主の恩に報いようぞ!!』
そして…
三人は熱く揺さぶる心を押さえ下関港に居た。
『かたじけない。』
秀頼と幸村は深々と頭を下げた。
『何のこれしき。それよりも道中御無事で。私も全国に散った豊臣の将を探す事に尽力します。』
秀頼と輝元は抱き合った。
この毛利輝元こそが後に豊臣の宰相として、めまぐるしく活躍するのはまだ先の話しである。
幸村と秀頼は毛利の船に乗り一路九州へ向かった。
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