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私の右目は光の世界。
私の左目は闇の世界。
人の中にある両極端の性質が見えるのよ。あ。視力は両目ともに1.5。よく見えるんだ。
「待った?あ……まだものもらい治ってないんだ。大丈夫?」
「うん。なんかしつこくて」
橙色の空気が舞う夕方。最近知り合った意中の男性が話し掛けてくる。雑踏の中での逢瀬。私の左目には眼帯。彼と初めて会ったときからしているの。ものもらいなんてウソよ。そう、ワザと隠しているの。
「ご飯食べた後に映画を見ようと思ってたんだけど、あんまり目を使わない方が良いよね?」
彼は私の死角を気にしながら歩いてくれる。なんて良い人。彼からはキレイな薄青色の煙が揺れている。うん。私、青色が大好き。
「ありがとう」
私はニッコリ笑ってお礼を言った。そして前を向き手を繋いで歩き出す。
さあ、次の逢瀬からは右目に眼帯をしよう。彼の良い部分は堪能した。次は彼の中の闇をおもいっきり啜ろう。そして最後に眼帯を取って二つを同時に感じるの。彼の表と裏。混じり合う極端。
これが私の恋愛の楽しみ方。表と裏、二つを貪欲に味わっているの。
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