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「杉本先生」
そこには心のクラス、1年A組の担任 杉本陽一だった。
「注文していた画材が届いたぞ。後で職員室に取りに来い」
「はい。ありがとうございます」
心が返事すると、杉本は腕時計で時間を確認し、踵を返して行ってしまった。
心は下がった黒ぶち眼鏡を指でクイッと持ち上げ、美術室の扉を開けた。
ガチャ
扉を開けると同時に、ツンと美術室特有の匂いが心の鼻をくすぐる。
絵の具の匂い、粘土や石工、デッサンチョークの匂い。
「やっぱりここは落ち着きます」
心は机にカバンを置き、窓の外を眺めた。
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