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>クレパスの途中に宙吊りとなった5人は、何とか足場の在る所まで移動すると、強制帰還のプログラムを発動させた
>その時、不運にも早苗が足を滑らせた。落ちる彼女はイリスの腕を咄嗟に掴もうとした。
だが、差し出した手は払われた。
>そのまま落ちて行く彼女を助けたのはバードだった。彼は、間に合わないと判ってか、彼女の腕を掴むと遠心力を使って上に投げ上げたのだ。
指定領域に達した彼女は強制帰還され無事助かった。だが、バードはクレパスの下に落ちてしまった
>助けられなかった
>愛は我に帰る。その、血の付いたままの両中指で己の額の一角を押さえた"何も起こらない"と見えた次の瞬間、一面の血痕が消え去る。
部屋の中で苦しんでいた者達が、突然夢から覚めたように正気を取り戻す”何が起きたのか?”と傷の消えた身体を見回している
>ズミもまた、その一人だった
「愛さん、きみは…?」
「オクターヴは私の…」
「?」
「―貴方になら、話せるかもしれない」
>彼女だけが血まみれだった。その手の平に目を落し、暗い淵を覗き込むような表情をしている
(誰に話すというの? こんな私の身の上話など)
>そんな日が来ることなど無いのだ。決められた者の行く先を、変えることなどできない
「美人が台なしだ」
差し出された手が血に汚れた手を優しく包んだ。残りのマナを寄せ集めてその人の汚れを清める。
「愛さん、助けてくれて有難う」
>言葉に驚いて見上げる。そこには、ズミの澄んだ青い瞳が有った
>金の髪が髪止めを無くしなすがままに広がっていた。その姿が在りし日のバードとダブり、彼を救えなかった己を恥じる
>明はそのためにズミを選んだのだろう。彼女の良心を揺るがし思い知らせる為に
>これほどの復讐が他に有るだろうか
>バードに似た者の優しい言葉を聞く度に、良心の傷が増してゆくのだ
「助けられなかった!」 その後悔が、彼女の心を蝕んでゆく
>そんな事など知らない者は、彼女の為に慰めようとする。すればするだけ傷は広がっていくというのに…
>去り際の、明の勝ち誇った笑み。彼はそうなることを疑う事なく、恋人の待つ所へと去って行ったのだっ
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