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「その頃の私は、”早苗”と名乗っていたの」
>愛の隣にはズミと名乗る29歳の青年が、彼女と同じく身を隠していた
>二人は次元管理局の休憩施設の一室、その片隅で床に座り込んで居る
>午前の休憩時間は既に終わっており人気は無い
「…今は"愛"さん?」
「そう」と笑顔してみせてから
「"早苗"と名乗っていた頃の話しなんだけど………バンカーラインの不正利用者を追跡捜査中で、とある中学校に潜伏しているのを突き止めたの。
それで、彼等の動向を調査しつつ捕獲準備をするため、私もその学校に転入したんだけど………」
>話しの先が見えないながら、ズミと名乗った青年は辛抱強く彼女の話しを聞いていた
>さりげなく先を促す
「それで、何かそこで起こったのかい?」
「ええ、そうなの」
>愛の横顔は苦痛を隠すかのようにうつむく
「多分、今回は事故。…だけど、バンカーラインを使って次元移動や空間・時間のジャンプをしたさいに失敗すれば”過去と未来の人間”を入れ換えて移動してしまったり………命を落とす危険性が有るの」
>ひと呼吸置いて、
「―――あの時は、犯人が時限つきでバンカーラインを発動させて………私には何の予防作も無くて、彼…助けられなかったいいえ、きっと何処かで生きてる。何処かで!」
「………恋人?」
愛は顔を上げた
目が合って微笑んだ。首を降った
「幼なじみ。かな…」
「居なくなって気が付いたって感じ?」
「うっ」っと赤面した
「…うん」
「辛い、ね」
「そうでも無い。かな…捜してくれてる人達が居るから」
「その人、私に似ていますか?」
「えっ?」
>扉の開く音に、二人は身を寄せて隠れた
>歩き回る靴音に息を潜める
「居ないなぁ」
男の低い声が言い置いて足音が遠ざかって行った
「―――何故だろう? ここ自体はマナが薄いのに、一瞬…?」
「まな?………もしかして貴方、ギルドの一員なの?」
「はい。まだ、仮のだけど。"峰"の修業者です。免許申請中って所できみの言ってた”バンカーライン”―――私達は"動鎖"って言ってるけどね。それの試運転しようとしていて………”飛ばされた”みたいだね」
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