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視界を奪う暗い闇の中、一点の灯が一際目立ち、月明かりが更にその灯を一段と際立たせる。
灯の元では、夜な夜な青年が文字を書き綴る。
瞳からは、光り輝く涙が絶えず滴り落ちていた。
「なんでだよ……」
「うっうっ……」
鳴咽をし、その涙は留まる事を知らない。
突然、激しく机上を叩きつけ、俯せに倒れるように顔を伏せる。
青年は持っていたペンを強く握りしめた。
突然降り出した雨音に気付いた青年は顔を上げ、部屋の扉を激しく開き、外に飛び出る。
降りしきる雨は、月夜に照らされていた地上を途端に、神妙な空気へと一変させる。
土砂降りの雨の中、青年は呆然と立ちすくむ。
見上げた空は、いつもと変わり無い表情を見せていた。
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