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だがその事を幸平に話して良いものか、操の胸中は穏やかでは無かった。
「操……あれ!」
操は幸平の甲高い声に呼び覚まされたかの様に、傾げた首を上げた。
留まる事無く走り続けた二人の足は、もはや立っているだけでも小刻みに震えていた。
思わず目を見開き、黒い瞳を浮かべる目の先に映るは捜し続けた操の母親 の姿だった。
「おふく……」
操の声を途切れさせるタイミングを狙ったかの様に、突然乾いた銃声が鳴り響いた。
時が止まったかの如く、操の聴力と声は突如として失われた。
見開いた眼に映された映像は、どんな画質の良い映画よりも、より鮮明にそして不思議かスローモーションを見ている様に映し出された。
銃弾を受け、体を激しく揺らし、口元からは血を垂れ流していた。
その姿は操の生きてきた中でも、飛び抜けて衝撃的な光景だった。
数秒後、操の思考は再び動き出し、周囲の音も耳に入って来た。
何故かその場に立ち尽くす操に幸平は、体を揺すり激しく呼び掛けていた。
「操……!操……!」
だがそんな懸命な声も操には到底届いていなかった。
早く救急車を呼ぶ事、撃った犯人を追う事など、今の操の脳裏には、到底考える余地など残されていない。
引っ掛かっていた事……ここ最近の一連の出来事の共通点。今の今までそれは疑問でしか無かった。だが今、突如として現実味を帯びてきた。それは二人共、俺と関わりのある人達という事……!
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