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幸平の威勢の良い声が職員室に響き渡る。
その目線の先には担任の[森岡 敬二(けいじ)]が二人を見つめ、深々と椅子に座っていた。
「操、早くこっちに!」
大きな手に手招きされるように、操は敬二の前に立った。
「何ですか? 先生」
何がなんだか分からない操は元気の無い声で呟いた。だが急に隣から何か押し付けられている様な感覚を覚え、顔だけ向きを変えた。
隣を見ると、幸平が何か鞄を渡す様に自分に押し付けていた。
幸平はいつもの表情を取り戻し、操を優しい瞳で見つめていた。
「ありがとう、幸平」
二人はハイタッチをした。
敬二は突然、操の肩をがっしり掴み、声を大にして叫んだ。
「今……お前の家から連絡があって……とにかく早く帰るんだ!」
「……へ? 」
とぼけた声を出す操を敬二と幸平は、職員室の入口から勢いよく押し出した。
二人の真剣な表情を見た操は、軽く頷き急いで帰路についた。
「ふぅ……」
息を吐き、再び自分の椅子に戻る敬二に幸平は尋ねた。
「先生……操の家どうしたんですか? 」
「ちょっとな……」
敬二は深いため息混じりの声を出した。
幸平は、そんな敬二を疑念の目で見つめていた。
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