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体育祭の日は雲一つない綺麗なまでの晴天だった。
それなりに運動が得意だった俺は、母さんと有希の見送りで意気揚々と家を出た。
体育祭のようなイベントは、俺にとっては唯一楽しめるものだった。
いつもよりも少し高いテンションで家の門を出ると、俺はそいつと出会った。
最初は目の前の光景が信じられなかった。
道路の真ん中に、人が倒れていたのだ。
紺色に近い黒色のジャージは、俺と同じ神城高校のジャージだ。
彼女もそれを着ていて、そしてその流れるような金髪は、黒色のジャージとよく似合っていた。
俺はそれを見た瞬間、親切心でも好奇心でもなく、ただ話しかけてしまっていた。
肩を揺すりながら呼びかけると、うつ伏せで倒れていた少女がゆっくりと起き上がってきた。
その顔は俺が見てきた中のどの女子よりも輝いて見え、俺は一瞬見とれてしまっていた。
地べたに座ったまま、しゃがんでいた俺を見ると、彼女は口を開いた。
「誰ですか…?」
「第一声がそれかよ…」
それが、俺たちの初めての会話だった。
そしてこれが…西依千佳との日常の幕開けであった。
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