俺と千佳 【中】

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「千佳……歩きにくくないか……?」 「多少歩きにくくても良いんです……」 人通りが多くなるまで……という理由で、腕を組む事を了承した俺だったが、思いのほか歩きにくいものだと、今痛感しているところだ。 でも、千佳の言うことも一理あると言うことで、俺はそのまま歩いていく。 神城市の中心部に近づくにつれ、人通りが増えていく。 それもそのはず。今日はこんなに晴れていて、何より日曜日だ。 出かけようと思う人は今日ほど都合の良い日はないだろう。 俺たちは約束通り腕組みを止め、今は手を繋いでいる。 秋だというのに、良い陽射しが降り注いでいて、さらにコンクリートジャングルな神城市内も影響してか、今日は無駄に暑い。 握り締める手も、手汗が止められない。 でも、俺たちは全く気にせずに、ようやく市内にたどり着く。 「それで……今日はどこに行きたいんだ?」 そこで俺は本題を投げかける。 デートコースは男が決めるものという説もある中、こうやって千佳に任せていることに多少の情けなさは感じてしまうものの、よく考えれば、俺たちの間でそんな考えは不要だという結論に達し、無意味に幸せな気分になる。 「えっとですね……、映画とか…あと、新しい服も見たいです……。 そのままウィンドウショッピングも……」 「沢山ありそうだな……。まぁ、約束だし、全部付き合うよ」 今日は忙しくなりそうだ……。
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