俺と千佳 【中】

14/64
117572人が本棚に入れています
本棚に追加
/535ページ
とりあえず、映画を見に行こうということで、そのまま神城市の映画館に直行した。 映画館では、アクションやら恋愛やらと、様々なジャンルの映画が放映されている。 その中で千佳が選んだのは、意外にも恋愛系。 しかも、舞台は神城市の伝説にある鏡湖という、今は無くなってしまった湖の物語。 何やら、天から降りてきた神様である神城鏡(かみしろのかがみ)って奴が、人間に恋をしてしまうというありがちな設定のものだ。 だが……油断していた。 「……良い話でしたぁ~……」 映画を見終わると、千佳が目を潤ませながら感想を述べてきた。 それもそのはず。 最後には誰も残らなかった。 かがみんは亡くなり、愛された男も亡くなった。 それだけだとただの悲劇なのだが、その亡くなると分かっていながらも愛し合っていた二人は、賞賛に値するというか、見習うべきだと思った。 「あぁ……凄かったな……」 ボキャブラリーの無さが嘆かわしい。 凄いとか、感動したとか……呆れるわ。 まぁ……そんなことは大きな問題じゃない。 「どうする?まだ余韻に浸ってるか?感想を話し合ったりして……」 「それも良いですけど……泣いちゃいそうなので止めときます……。 悠さん、次はウィンドウショッピングに……」 「ん。じゃあ……行こっか?」 千佳の意向に従い、俺たちは少し良い気分のまま、手を繋ぎながら映画館を後にした。
/535ページ

最初のコメントを投稿しよう!