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門。
…いま、彼の目の前には門がある。
白くて、豪華で、神々しいまでに綺麗な門。人はソレを最期の門という。
誰もが最初にとおり、誰もが最後にとおる。人間創造、人間消去の門。
頑張ってきたつもりだったのに。
成績だって、上げろと言われれば出来るだけ頑張って上げた。いい子で育ってきたはずなのに。
…根が悪いと、やはり駄目なのか。
少しだけ自分のことを悔しいと、彼は思った。
少しだけ自分のことを馬鹿らしいと、彼は思った。
少しだけ自分のことを、嬉しいと、彼は思った。
言いなりだった自分と、やっとおさらばできるのだ。マリオネットだった自分と。
発端は突拍子も無く、偶然に偶然を合わせたものだったけど、それでも彼は操り人形から離脱できたのだと思った。
死。彼に与えられた最後の運命はそれだった。
そして、門の前にたどり着いた。
ギイイイと軋んだ音を立てて、門の扉が開く。彼は一歩進んだ。
真っ暗で先の見えない、門の先。一寸先は闇、かと軽く考えつつも、また一歩踏み出した。
もういいか。
そう思った矢先、がくんと身体が闇に沈んだ。
どこまでもどこまでも落ちていく。
オギャー、と分娩室から産声が上がった。
「お母さん、よかったですね。元気な男の子ですよ」
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