『失』恋愛小説

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『失』恋愛小説

恋を、しました。 それはもう唐突な事ではなく、じんわりと温められていくかのように、ゆっくりと気持ちが開花したのです。 気付いたのは進級してから暫くして、前のクラスが同じだった男子を偶然見掛けたときでした。 暫くぶりに見る彼が、モノクロな世界に一人だけ色付いていて。 胸がドキンと鼓動を鳴らしたのです。 急に上昇する体温、胸が早鐘の様に鳴って、その場は直ぐさま立ち去る事にしました。 でも、授業中も家に帰ってからも、彼の事が頭から離れなくて。 たまらず、友達に相談しました。 もちろん、名前は伏せて。 友達もそれは恋だと教えてくれました。 翌日、また彼に会いました。また偶然で、廊下ですれ違っただけです。 でもおはよう、と挨拶を交わして。 それだけで私は幸せでした。 私の淡い恋は、続きました。 偶然見掛ける度に、胸を踊らせ、顔を赤くして、本当に、初めての恋だったのですから。 告白する勇気はありません。 でも、何かで繋がっていたかった。 だから、話をしてみよう、そう思い、その日はそのまま彼を思って夢へと落ちました。 次の日、相談した友達が私に慌てるように声を掛けてきました。 彼に、彼女がいたそうです。 一気に崖を突き落とされた気持ちでした。 結局、私の恋は実らないものでした。 開花を遂げた恋の花はまるで花ごと地面へと落ちるように、 気持ちは落ちてしまいました。 そんな、私の初めての恋は、ありきたりな失恋でした。
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