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「でもアヒルは歩き慣れていないから疲れてしまって、あるステンレスのタンポポが描かれた白いポットに飛び込んで、他の家の女の人の所に行くんです」
その女の人はうっかりやさんで、よくポットを火にかけて長電話してしまう事があったそうだ。
「どんなに注意しても治らないし、ある日水も入れずに空焚きしてしまったものだから、アヒルは怒ってお気に入りのタンポポをポケットにつめて出ていってしまうの」
そうしてお婆さんの家の、まだ取ってあった真っ白なグラタン皿に戻って、タンポポを皿に植えて、また仲良く暮らしたのだという。
「小さな頃母に読み聞かされた大好きな本だったんです」
ほんの少しうっとりした様に言った後、彼女は小さく呟いた。
「私、本当に絵が喋ったり動いたりすれば、本当に素敵だと思うんです」
彼女は、そんな子だった。
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