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さっきまでの威勢はどこに行ってしまったのだろう。今になっても、さぁ起こせ!みたいな表情してたら無視するつもりだったのだが。
嵐山ねこ、なかなかにテクニシャン。でもなぁ。鮫口絆を見る。
これを起こすのか?
まぁ、いいか、幼稚園時代からの腐れ縁だ、友人のために一肌脱ぎますかね。殴られるのは勘弁だが。
さて、鮫口絆を起こす。それは偉大過ぎるほどの偉業のように思えた。誰も起こすやつなんていないし、そもそも起きない。
「鮫口さーん」
呼んでみた。当然のように鮫口絆はピクリとも動かない。まるでそうあることが正しいことのように眠り続ける。
肩を叩いてみる。柔らかく温かい肩。ホントのこと言うなら起こしたくない。寝起きの鮫口絆には常識なんて通用しないらしい、から。
ここまでやれば腐れ縁の分くらいは頑張っただろ。
「悪いな、ねこ、無理だった」
そう告げた時だ。
「一体何の用なんですか?私を起こそうだなんて、返答次第では怒りますからね」
近くから、そう聞こえた。凛とした自分の道を常に進んでいる無頼の人間だからこそ出せる芯のある声。
とはいっても彼女、鮫口絆はその言葉を言い終えてから目を開き、僕の姿を見たようだ。
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