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いや、彼女の父親が桶風商事の専務であることは確かなのだが、んな圧力なんて公務員に対して有効だとは思えない。
僕としては、単純に触らぬ神に祟りなしの説を押すね。誰だって押したら毒ガスが出ます、と書かれたボタンなんて押したくはない。しかもその毒は即死じゃない、ジワジワとなぶり殺されるのが分かっているのだ。
少なくとも、僕はごめんだ。ねこはどうだか知らないが。
というよりも、幼稚園からの友人は全力でボタンを押しにいっているようにも見える。彼は筋肉の見え方が足りないとでも思ったのか、上半身の服を全て脱ぎ捨て、その立派な腹筋だか胸筋だか三角筋だかをぴくぴくと鳴動させている。
下半身まで脱いだら挨拶をするのを止めて他人になろう。
そう決めていたが、ねこもそこまで馬鹿ではなかったようで鮫口絆に反応が見られないのに気付くと、すごすごと戻ってきた。
「くろ~駄目だった。俺の上腕二等筋になんの反応も示さないなんて、まだまだ鍛え方が甘かったのか!」
ねこのぶっとい腕に興味深々な女の子も嫌だが。
まだ鍛えるつもりなのか?その丸太のような体を。プロレスラーにでもなる気か?
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