何度でも

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ナノハとアツシは、高校のときに付き合い始め、今年で、6年。何にもなかったとは、言えないけど、むしろ、 いろんなことがあったけど、今年もお互いの誕生日を祝い、旅行に行き、これまでと同じように一緒の時間を過ごしたはずだ。 10月のはじめくらいに、アツシが実家を出て、友達と3人暮らしを始めると言い出してると、ナノハから相談をうけた。 「この歳になって友達と暮らすなんてバカだと思わない?」 「思う。絶対うまくいかないからー。」 「でしょ?言っても聞かないと思うけど、やっぱり話してみる。」 私は、あまり深く考えてなかった。アツシは、1こ年下で、周りの友達もまだまだ、落ち着く気配もなく、今楽しいことが一番大事、 って感じだから、また、いいこと思いついた、みたいな軽い気持ちだろう、と。 女の25歳と、男の24歳、人生計画の違いから起きた、よくある喧嘩。 ナノハだって、アツシが実家を、出ることに反対しているわけでは、なかったと思う。 ただ、なにかを決めるとき、そこに自分という存在を忘れないで欲しかったんじゃないかと私は思う。 6年も一緒にいたら、たいていの女は結婚を考える。 この人の子供が欲しい、父親になった彼を想像する、なんなら親と同居してもいい、恋をしてる女は、そんなものだ。 それが、友達と暮らす?そこに苛立ちや不安を覚えた彼女は正常だ。 「言うだけ言わせてっていったの。今日言ったらもうなにも言わないからって。」 ナノハは溢れ出そうな悲しみを必至に抑えながら、アツシとのやりとりを話してくれた。 「そしたら、別れようって言われた。」 ナノハがアツシにどんな風に話したかは、わからないけれど、どんな言葉も彼女には言う権利があるはずだ。 そして、別れよう?なんだそれ。 「で、ナノハはなんていったの?」 一息ついて、ナノハは答えた。 「6年付き合って電話で終わりなんて嫌だっていったら、落ち着いたら連絡するって言われた。」 「そう、じゃ待つしかないんだね…。」 「うん。うん。」 「…。」 なんにも言えない私にガッカリした。 電話を切った後、あの広い部屋に一人うずくまるナノハを、想像するのは、実に簡単なことだった。 その夜、ナノハと高校のテラスに座って話している夢を見た。
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