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ナノハは、背が高く、顔立ちもスマート。流行にも敏感で、運動も出来たし、何より面白い。
高校のとき、後輩達からは、カリスマ的な存在だったといっても大げさではない。
そのナノハが、アツシのことになると、あんなにも弱くなる。
どんな強い女でも、人を愛すると、自分の弱さを嫌というほど思い知る瞬間がある。
「ナノハ、大丈夫か?」
電話を持ったまま、ぼーっとしていた私は、ケンタの声で急に現実に引き戻された。
「大丈夫じゃないよ。アツシ、何考えてるんだろう。」
「よくわかんないけど、アツシくんの気持ちも分んなくもないかなー。男的には。」
私は、無言でケンタの顔を見た。たぶんすごい顔をしていたと思う。
(あんたに何がわかるの…。) 深呼吸をして、この一言を飲み込んだ。
ナノハのことだけではなく、最近、ケンタに何かを言おうとすると、どこか、トゲがある言葉になってしまう。
一緒に住んでいるのだから、だんだん家族みたいになっていくのは当たり前のことで、そのせいのイライラだろうと思っていた。このまま結婚するんだろーなとも思っていた。
恋愛にずっとなんてないことを忘れていた。
もうすぐ、そのことを思い知ることになるなんて、この頃は想像もつかなかった。
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