4014人が本棚に入れています
本棚に追加
早朝。
いつもならまだ寝ている時間。
桜の花びらがはらはらと舞う並木道をゆっくりと歩く。
まっすぐに高校まで続く道。通学には早すぎて、他に人はいない。
麻生美里(あそうみさと)は、桜の季節のここが、とても好きだった。
苦手な早起きをしてまで、家を早く出てよかったと思う。
朝の澄んだ空気の中、まだ人に踏み荒らされていない、淡く舞い落ちる花びらに染まる道は、汚れがなく幻想的で、心が震える。
「綺麗だなあ。」
美里の足は、自然に止まり、樹々達に目を奪われた。
しばらくうっとりとししていた美里だが、やがて、ふと、視線を感じ後ろを振り返った。
若いスーツ姿の男性が、一人。並木道を歩いて来ている。
この道は、学校にしか繋がっていない。
と、いうことは学校関係者だろうか?
見覚えがない人だけれど。
(み、見られちゃったよね。なんとなく恥ずかしいな…。)
最初のコメントを投稿しよう!