桜並木での出会い

2/6
前へ
/295ページ
次へ
早朝。 いつもならまだ寝ている時間。 桜の花びらがはらはらと舞う並木道をゆっくりと歩く。 まっすぐに高校まで続く道。通学には早すぎて、他に人はいない。 麻生美里(あそうみさと)は、桜の季節のここが、とても好きだった。 苦手な早起きをしてまで、家を早く出てよかったと思う。 朝の澄んだ空気の中、まだ人に踏み荒らされていない、淡く舞い落ちる花びらに染まる道は、汚れがなく幻想的で、心が震える。 「綺麗だなあ。」 美里の足は、自然に止まり、樹々達に目を奪われた。 しばらくうっとりとししていた美里だが、やがて、ふと、視線を感じ後ろを振り返った。 若いスーツ姿の男性が、一人。並木道を歩いて来ている。 この道は、学校にしか繋がっていない。 と、いうことは学校関係者だろうか? 見覚えがない人だけれど。 (み、見られちゃったよね。なんとなく恥ずかしいな…。)
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4014人が本棚に入れています
本棚に追加