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うつむいたままの美里に、さらに近付く彼の革靴が見えた。
はっとして、顔を上げると、彼の指先がそっと髪に触れた。
花びらを摘んで、指はすぐ離れていったものの、近付いた距離はそのままで、離れることはなかった。
絡んだ視線は甘かったが、美里は受け止められず、恥ずかしくて顔を背けた。
彼は、
「そんなに硬直しなくてもいいだろうに。」
と苦笑して、今度は少し荒く、美里の髪をまぜた。
「教師が生徒を口説くわけがない。」
そう言うと、すっと離れる。
「ただ、綺麗だったとそう言っただけだ。」
「先生…なんですか?。」
「君は、1年生だろう。僕は、2年3組の担任で、2年の数学を担当している司冬耶(つかさとうや)だ。」
美里の通う高校は制服のタイが学年で違う。
それで、すぐに美里の学年がわかったのだろう。
美里は、ほっとしたような、残念なような混乱した思いのまま
「1年1組出席番号1番麻生美里です。よろしくお願いします!」
と、勢いよく頭を下げた。
司は、笑いをこらえながら
「ああ、よろしく。」
と応えた。
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