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自分は何なのか。
そう、問い続けた。
彼に、正式な名前はない。戸籍に載っていない人間だからだという。
座敷牢に閉じ込められた女性が、想像し続けた子の存在。そのイメージに、“存在”が介在して生まれたのが、少年だった。
色素が欠乏していた母親譲りの銀髪と、滑らかな、病的なまでに白い肌。その表面に、複雑に這う黒い、模様。
鏡を見る度に、自分が分からなくなる。
ヒトでもなければ。
“存在”でもない。
どっち付かずの、不安定な自分。身体の性能も、人間を遥かに凌駕している。
白い部屋の中で、少年は思う。
自分は一体何なのかと。
だが、そんな彼にも癒しはあった。
自分と同じではないが、似通った存在、ヒトの身に異次元の住人を宿す者。
その中でも、少年を一番大事に扱ってくれている、親代わりであり、兄代わりである男。黒い短髪に眼鏡の彼は、少年に名をくれた。生を切り開く者。
切生(きりく)という名を。だから、少年は誓った。
自分が何者であっても、彼を傷付ける決断だけはしまいと。彼がヒトの味方なら、自分もヒトの味方になろうと、そう、誓った。
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