失ったモノ

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「んッ………」 目を開ける。何時間寝ていたのか……時計を見ると針は夕方4時を差していた。 「うわ……フリータイム終わってンじゃん……」 ベッドから身を起こしボサボサの頭を手ぐしで解かす。隣を見ると男が熟睡していた。 「ちょっと起きてよ」 「んー……―――」 唸るだけで起きない男をしり目に私は立ち上がる。めくれた布団から男の体が見えた。腕や足、背中に彫られた刺青。 「……」 無言でため息をつく。 男が何者かは知らない。知っているのは歳と名前だけ。たまたまコンビニで声を掛けてきただけでどこに住んでいるのかも分からない。 でもそんな事、どうでもいい。一時の快楽を楽しむのには必要ない。 私にとって男は恋愛対象なんかではなく、行為はただの暇潰し。求められることはあっても求めたりはしない。 風呂場でシャワーを浴びる。曇った鏡に水をかけ、自分の姿を見た。 「……汚い―――」 体を洗っても洗っても汚い感じがして。自分自身に嫌悪を覚える。キモチワルイ。
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