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交わる剣と剣 交わる白と黒
されど何故 思いだけは交わらず
やがて闇を貫く光 崩れ落ちる死神
あの時とは真逆の光景
されど胸を浸すのは 変わらぬ悲しみ...
「そうだ...此で良い...」
幸福そうに笑う男を、白銀の騎士は見下ろしていた。復讐は果たした。其れなのに、躰を擦り抜けていくこの虚しさは何だ。全てを棄てて迄果たした行為。然し、その後に何が残る?
「この争いに...終わりはあるのか...?」
「待ち望んだ所で終わりはしない...望むのならば、貴様が其の手で終わらせる事だ...」
「...悪魔に魂を売り渡した、愚かな男に一体何が出来る...?」
「憎しみから始まった争い...止める事が出来るのは、其れを凌駕する憎しみだけだ...」
過ちを知るからこそ 正す事が出来る
憎しみを知るからこそ 癒やす事が出来る
「貴様は戦え...死神には出来なかった、あの女の願いを叶える為にも...」
そう言い残して死神は、静かに息を引き取った。彼は其の高潔な騎士の為、弔いの十字を切る。白銀の甲冑が、斜陽の影に煌めいた。立ち上がった男の手に握られたのは、黒き剣と、白き剣。其処に居たのは、死神でも、騎士でもない。新たに生まれた、一人の英雄だった。
彼は果たして、戦乱に終幕を齎す者と成り得たのか...其れは未だ、歴史の底で眠り続ける色の無い物語...
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