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「ねぇ」
「ん…?」
「何してるの」
応接室から窓の外を眺める君に思わず僕は声をかけた。
「別に?…ただもう桜の季節何だなーって思ってさ」
そういう君のもとに風に運ばれ桜の花弁がひらりと舞落ちる。
外を眺め、その花弁を眺め……
そんな君の表情は何時もと違い何処か切なげだった。
この時
『どうかしたの?』
って聞いてあげれば良かったのかもしれない
僕は君が何を考えていたかなんて全くわからなかった。
「ねぇ」
今度は僕が話し掛けられ、次の言葉に少し驚いた。
だって君からそう言うの…珍しいよ?
「今日…一緒に帰らない?」
「…何、急に………」
「いいの?悪いの?」
「…………別に…構わないよ」
僕はその誘いを受けた。
帰るくらい……ね……
「…そっか、よかった」
君が微笑むものだから、僕は何も言えなくて
ただひたすらヒラヒラと
窓から運ばれる桜の花弁を見つめていた。
君はその花弁を手で掴み、それを少し眺めた後『行こ』っとって僕の腕を容赦無く引っ張った。
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