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「そういうつもりじゃなかったんだけど……気を悪くさせたんならごめん」
何だか今日の灰斗は、いつもと違って見えた。
数年前、初めて保健室で会った時とは違う、深みを帯びた陰りを落としている。
「元気ないのかなって。だから少しでも役に立てればって……でも僕の勘違いなら、それでいいんだ」
微笑んだつもりだった。だけど褐色の肌は何かを訴えるように僕を掴んで、真反対の色を持つ二つの右手は僕の胸の傍で絡んだ。
予想外の音がする。
「お前、幸せなの?」
一瞬、意味がわからなかった。雑踏も車のクラクションも全て、僕の鼓膜を叩かなかった。
透明になったかのように。
いつの間にか止めていた息を強く吐き出して、彼に問い返す。
「どういう、意味」
「何処まで行ってもたどり着くのは“あぁ良かった”……なんだろ?俺達の最後にもお前はそう言った。その度に戸惑う。純白で……綺麗すぎて、俺は寒気がする」
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