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差し出せば足を絡みとり、自由を奪う程の白。
僕らの故郷は冬になると、そんな冷気を帯びる街。
学校帰り、通学路から外れた空き地に寄って、雪に寝転ぶ僕を笑って、所在無さげに彼は言った。
「雪に足跡つけるのってさ、怖いんだ。汚すみたいで。でも」
彼は言った。
僕に背を向けて言った。
「ここに留まるのも辛い」
彼の背中は小さくて、近くにいるはずなのに遠くて、そのまま離れて行く後ろ姿は白い息が邪魔してよくわからない。
気がついたら手は真っ赤になっていて、震えるよりも凍っていて、家に帰っても一人だから自販機で暖かいココアを買って。
その日から、僕たちは別々に帰るようになった。
その日から、僕は地鳴りを聞くようになった。
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