空を忘れた天使は

4/12
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
差し出せば足を絡みとり、自由を奪う程の白。 僕らの故郷は冬になると、そんな冷気を帯びる街。 学校帰り、通学路から外れた空き地に寄って、雪に寝転ぶ僕を笑って、所在無さげに彼は言った。 「雪に足跡つけるのってさ、怖いんだ。汚すみたいで。でも」 彼は言った。 僕に背を向けて言った。 「ここに留まるのも辛い」 彼の背中は小さくて、近くにいるはずなのに遠くて、そのまま離れて行く後ろ姿は白い息が邪魔してよくわからない。 気がついたら手は真っ赤になっていて、震えるよりも凍っていて、家に帰っても一人だから自販機で暖かいココアを買って。 その日から、僕たちは別々に帰るようになった。 その日から、僕は地鳴りを聞くようになった。 _
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!