紅い月

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ある嵐の夜のこと 強い風雨に打たれながら 闇の中から声がした。   「あ゙ー…  喉…乾いたなぁ…」   水分なら 幾らでも周りにあるというのに その口には 水では満たせない渇きがあった。   闇に溶け込む様な姿   服の袖と思われる辺りから ときおり白い腕がのぞく。   電灯の下   暗闇から現れたのは 黒い系統の服に身を包んだ人物だった。   「風邪引くぞ」   俺が声をかけると 雨に濡れた長い髪の隙間から 不機嫌そうな眼が こちらを見る。   「…これくらい平気だ  死ぬ訳じゃあるまいに…」   面倒くさそうな声が返ってきた。 彼女の能力なら 着る服だろうが外見だろうが 思うがままなのだろうということは分かっている。   だが 彼女はあまりそういったことに能力を使うことはしないようだ。   それに…   「今は…それどころじゃない…」   呼吸が少し荒い。  
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