あるいは選択肢という名の可能性

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 くそっ、驚きと感動で上手く舌が回らん。  コレクターとして情けない話なのだが、俺は『プロトタイプオジさん』の現物を見るのは初めてである。 「『お前』?言葉使いが間違ってるんじゃないのかな、鮎川君?」 「失礼しましたっ!響歌様、手にとって見ても宜しいでしょうか?」 「苦しゅうない。存分に堪能なさい」  ヤバすぎる。なんなんだこの愛くるしさは!プロトタイプなのにクオリティが高すぎるぞ。 「ねぇ、鮎川?」 「なんですか?響歌様?」 「それ、欲しい?」  …欲しい。  今までさんざん探し回って、現物を見ることすら出来なかったかった幻の『オジさん』だ。欲しくないわけがない。 「えっ!?くれるの?」 「言葉使い」  ええい、もどかしい。 「このような私めに、響歌様から『オジさん』をいただけるとは感激です!」 「まだ、あげるとは言ってないわよ?」  …ぬぬ。 「ブーブー」 「『ブーブー』いわないの。あげないとも言ってないんだから。…そうね三回、回って『私こと鮎川優人は黒森響歌様の玩具であります、サー』と言えば考えないこともないけど?」  俺はクルクルと三回り、「私こと鮎川優人は黒森響歌様の玩具であります、サー!」と迷いの無い声で言いきった。 「…まさか、本当にやるとわね」  黒森が呆れ顔でこちらを見ている。 「で、いただけるんですか?」 「仕方ないわね。いいわよ、それあげるわ」 「マジで?いゃっほーい!サンキュー黒森!!」  俺はあまりの喜びに、黒森の手を取って上下にブンブン振った。 「ちょ、ちょっとやめなさいよ」  黒森が慌ているが気にしない。
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