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お返しにオマケで貰った海老天をなにも掴んでいない箸に挟んだ。
これでよし!
「部長~!新山部長~!」
俺は少し大きな声で話しかけた。
このままほっとくと学校が終わるまで考えていそうだしな。
「…ふぇ、あれれ?優人さん?いつからいたのですか?」
「たった今しがた」
「そうなのですか」
「そうなんです。それより先輩、最近『唐揚げが海老天に進化する』って怖い噂が流行ってるんですけど知ってます?」
「その噂は初耳です。いったいどんな噂なんです?」
「ええ…これは友達に聞いた話なんですけど。なんでも、昼間食堂で唐揚げ定食を食べていた女の子がボーっとしていると、箸で掴んでいたはずの唐揚げがいつの間にか海老天に入れ替わったそうなんです…」
夏の怪談話のような、ワザとらしい低い声を演出する。
「…あの、優人さん?それのどこが怖いんですか?」
「怖いのはここからですよ部長。次の日その女の子が目を覚ますと…」
「目を覚ますと…?」
新山部長が答えを促す。
「海老天の呪いで、頭から猫耳が、お尻からは尻尾が生えていたそうです…。おしまい」
「やっぱり、ちっとも怖くないのですよ」
「そうですか?俺は、かなり怖い話だと思いますけど。いい忘れてましたが語尾が『にゃ』になるんですよ?」
「その程度なら、可愛くっていいじゃないですか~」
そう言って部長は、箸で掴んでいた唐揚げだった物を口に運んだ。
「もぐ?」
ドキドキ。
「もぐもぐ。……っ!?」
わくわく。
「ゆ、優人さん大変です!!唐揚げが、唐揚げがぁ~!!」
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