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寒い。
まるで真冬だ。
刺された脇腹が痛い。
アスファルトが俺の血で染まっている。
くっ、体に力がはいらない。
寒い。
今年の夏は例年に比べても暑かったはずなのに。
大地に体温が奪われていく。
血を出しすぎたせいか、意識が朦朧としてきた。
しかし、なんで俺はこんところで死にかけているんだ?
やばい、考えることも疲れてきた。
あぁ、空が青くて綺麗だ。
もうどこが痛いのかもわからない。
寒い…。
意識が…、途切…れ…。
「大丈夫ですか~?」
頭上から間の抜けた声が聞こえる。
こういう場合、死にかけている人間に向かって「大丈夫ですか~?」はないんじゃないか?
「お~い、まだ生きてます?」
俺は死にかけた体に鞭を打ち、首を横に向けて声の主を探す。
そこには満面の笑みを浮かべた、煌びやかな巫女装束に身を包んだ少女が立っていた。
「よかった♪まだ意識はあるみたいですね♪」
くそっ、腹が立つ。何なんだこの女は。そんなこと言ってる暇があるなら救急車でも呼んでくれよ。
声を出そうとするが、喉から空気が漏れるだけで言葉にならない。
「その体じゃ喋れないと思うので~、一方的に言いますね♪」
訳が分からない、なにが言いたいんだ。
「え~と、一度しか言わないのでちゃんと聞いてくださいね~♪あなたはとある人物に刺されてこんな状態になってます」
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