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直人は踵を返すとつかつかと屋上から出て行った。 「おぉーびびったー。何俊也、恭平何がしたかった訳?」 「いや知らねーし、つーかマジでするかよ」 「な、男らしいっつーかなんつーか……」 恭平がフェンスに凭れたままぼんやりしている間に、友人達は各々好き勝手な事を言う。 恭平はしばらく直人が出て行ったドアを見つめていたが、そのうちくっくっ、と喉を鳴らして笑い出した。 「あいつ、マジおもしれぇな」 「は?ってか恭平ってホモだっけ?」 「ちげーよ司。清水はバイ」 恭平は何がそんなに面白かったのか、なおも愉しげに笑っている。 それを2人の友人はポカンとしながらみていた。 「恭平ってば、もしかして一目惚れ?」 「まさか。今更一目でもねぇし。でも気に入った」 「気に入ったとか!」 「だってフツーマジではしねぇだろ?面白すぎ」 「はい!意味ふめー!」 恭平は混乱したままの友人を残してドアの方へ向かって歩いていく。 「おい、どこ行くんだよ!」 「教室。約束は守んねぇと」 「嘘だろ……」 恭平はひらひらと後ろ手に手を振ると、閉まる扉のその向こうへと消えていった。 状況からも友人からも取り残された2人は呆気に取られたまま固まる。 「ありゃマジだぜ」 「ああ」 『約束は破るためにある』と豪語していた彼が、あんな小鳥がつつくようなキス一つで交わされた約束を守りに行ったのだ。 そりゃあ呆気に取られもするだろう。 「高橋……スゲーのに気に入られちまった気がすんだけど」 「俺も……」 小さくこぼすように呟かれた声は、雲一つない空へと吸い込まれて行った。
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