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真っ昼間の商店街を携帯を片手になにかぶつくさ言いながらスタスタと歩く女子高生がいた。
「っていうかポール、携帯の中から出て来ないで。お願い。」
「何故ですか?あなた以外に私は見えませんし、話しやすいでしょうに。」
「…私の心臓が慣れないの!」
道行く人々は皆、夕菜を不思議そうに見ている。
夕菜はすっかりポールに慣れ、普通に話すまでに至ったが、相変わらず『人が携帯から出て来る図』には慣れることができず、ずっとこの調子で話しているのだ。
ポールが叫ぶ。
「そこに入って下さい!」
夕菜は足を止める。
「ここぉ?食料品しか売ってない店だけど、いいの?」
「はい!」
夕菜は言われるまま店へ入った。
ポールが言うに、欲絆の鎖バトルで魔法使いの清田に勝つにはこっちもそれなりの力がないといけないと言う訳で、夕菜にポールが力を与えてくれるという話になったのだが…
何故かそこでポールは商店街へ行こうと言い出したのだ。
夕菜は店の中をゆっくりと見て回る。
しばらく歩いていると、不意にポールが聞いてきた。
「村雨さんの好きな飲み物は何ですか?」
「え?…オレンジジュース、かな。」
夕菜はそばに置いてあったオレンジジュースの缶を持ち上げて答えた。
「…すいません、ちょっと失礼します。」
ポールはそう言うといきなり携帯から出て来た。
「いっ!?ちょっ…何!?」
相変わらずこのシーンだけにはビビりまくる夕菜の頭に、ポールは軽く手を翳す。
「あなたに…私の力の一部を授けます。」
夕菜は身体の芯が熱くなるのを感じた。
(何かわかんないけど…すごい力を感じる)
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