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ポールは目を閉じた。
「私には、どうしてもあなたに勝ってもらわなければいけない理由があるんですよ。」
夕菜は驚きながらも、黙って話を聞く。
「私の記憶の半分は…偽の記憶なんです。」
「!」
「これは友人に聞いた話なんですが、それには清田が関わっているらしいんですよ。」
ポールは悲しそうな目をして語る。
「よくわからないのですが、私にはユカ神様との記憶が…ないんです。」
「ちょっと待ってよ!ユカ神ってあんたの慕って仕えてる、全能で世の最高神でしょ!?」
夕菜はあまりのことに驚きを隠せなかった。
ポールは夕菜の目を見つめて言う。
「半分の記憶は、清田に作られた…育てられた…一緒にいろんなことをした…そんな記憶なんです。
でもなんだか不自然なんです。
…少しも、少しも暖かくない。
違和感のある記憶。
きっとこれが偽の記憶ってやつだと思います。清田の作った…ね。」
「じゃぁもう半分は?ユカ神との記憶じゃないの?」
「…ユカ神様を除いた、これまでの記憶です。」
ポールの声は震えていた。
夕菜は言葉を失った。(そんなことって…)
外を見ると、電車が連結されている最中だった。
車掌と車掌の息のあったプレイに、夕菜はいつも魅了される。
「でも、ポールは、ユカ神様の命令で来たんじゃないの?私のサポートに。」
夕菜は車掌らを見つめたまま尋ねた。
ポールは少し考えてから、口を開く。
「私は元清田所有の魔神です。」
「!?」
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