力の理由

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ー…ある時、ポールは清田に、夕菜に洗脳の魔法をかけてくるように言われた。 清田は夕菜を手に入れるためなら何でもやるような、狂人と化していたのだ。 「もちろん、魔神でも魔法使いの中でも、洗脳の魔法は禁忌とされています。」 ポールは語り続ける。 禁忌を犯した魔法使いや魔神は…理由問わず存在を消滅される。 事情を知ったポールの友人は、ポールを命懸けで清田のもとから救出した。 清田の手の届かない場所まで来た時には、息も絶え絶えの状態だった。 ポールはその友人を無類の友だと思っていたが、なぜ自分をそこまでして清田のもとから助けてくれたのかわからなかった。 友人は、瀕死状態でもポールを真直ぐに見据えて、自分の足でしっかり立っている。 そして、 「ユカ神様のこと…やっぱり忘れたのね。」 と悔しそうに言った。 「ユカ神…様?」 ポールが口に出したその名の響きは、なんだか不思議な響きだった。 友人はポールに抱き付いて言う。 「本当に…本当に清田にやられて…忘れてしまったなんて… ひどすぎる…!」 そして清田の手にあるものを握らせた。 (これは…鎖?) それは黄金に輝く鎖だった。 でもその鎖はなぜか、不気味な光を放っているように見えた。 友人はポールから身を離し、座り込みながらも必死に言葉を紡ぐ。 「それは…ユカ神様が作った『欲絆の鎖』。…ハァハァ お願い、あの方を救えるのはあなただけ… 記憶なんて関係ない…大切なものは、心が覚えてるはずよ…」 「喋っちゃ駄目です!傷口が…!」 ポールは弱りゆく友人を抱き抱える。 友人はそんなポールを笑って見つめて言う。 「あなたに…この鎖を託す。 これは私がユカ神様から受けた仕事なんだけどね…ゲホッ 村雨夕菜を…助けてあげて… 清田を勝たせては…いけない…! ユカ神様を…救えるのは… あなただけ…」 友人は最後の力を振り絞って巨大な剣を取り出すと、清田とポールを繋いでいた証である、暗い紫に輝く『主従の鎖』を断ち切り、自分とユカ神を繋いでいるという明るい水色の鎖をポールに繋げた。
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