13人が本棚に入れています
本棚に追加
夕菜は溜め息をついて電車が来るのを見つめていた。
と、突然後ろから肩を叩かれた。
驚いて振り向くと、自分と同じ学校の制服を着た、1人の地味そうな男が息をゼーハーさせながら立っていた。
同い年のようだが、ひょろりと長身で、天然パーマの髪に青色の眼鏡、タラコ唇、極め付けの面長…
(無理…こういうタイプ)
夕菜は嫌に思いつつも、笑顔で対応する。
「あの…なに?」
男はすごい勢いで夕菜に1枚の紙切れを握らせた。
そして一言
「いらんかったら破って捨てて…!」
夕菜が口を開く前に男は走り去ってしまった。
夕菜は紙切れを見つめる。ある考えが浮かぶ。
電車が止まり、ドアがゆっくりと開く。
夕菜には、その開いたドアが、希望の光への道に見えた。
紙切れを捨てずに、強く握り締めた。
(私は…変われる!)
夕菜は一つの決意を胸に、ゆっくりと電車に乗り込む。
やがて電車は走り出す。もう降りることのできないであろう未来へ…
最初のコメントを投稿しよう!