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優と菜摘は自動ドアを抜け、エントランスホールに入る。
そこには90年代の二流リゾートホテルといった感じの風景が広がっていた。
新築の時には鮮やかだったであろう絨毯も、色褪せ踏み潰され、つるつるになっている。
優は吹き抜けになっている二階を見上げた。
エントランスホールは完全な左右対称に仕上がっており、一階から二階へ伸びる湾曲した階段も、優と菜摘の立つ入口付近の左右から、まるで宮殿を思わせる様な広い階段が二階へと続いていた。
少し前の優なら、二階の階段の手すりから滑り台の様に一階へ向かって滑ったら楽しいだろうな、と思っただろうが、今の彼はそんな余裕を持てる精神状態ではなかった。
ただ、全体的に色褪せたホールを眺めているだけだった。
受付の様な所で、先程の男性客が二人で何やら話している。
受付の係員が見当たらないから不審に思っているのかもしれない、と菜摘は考えた。
菜摘自身も、人の気配がしないこのホテルに、不気味な空気を感じ取っていたからだ。
しばらくすると、中年のおばさんが受付に現れた。
身なりは清潔感のある感じだったので、菜摘も、おそらく男性客も少し安堵した表情を見せた。
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