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「ご予約はされておりますか?」
青を基調とした生地に白いラインの入った制服に身を包み、受付の女性は尋ねた。
「いや、それがちょっと雨宿りをさせてもらいたくて来たんですが…」
受付の女性の礼儀正しい態度に、少し言いづらそうに男性客の一人が答える。
受付の女性は嫌な顔を見せる事なく、どうぞご自由にあちらのソファをお使い下さいと言い、優と菜摘のすぐ横に向けて手を伸ばした。
男性客は受付の女性に礼を言い、優と菜摘に近づいてくる。
「天気がよくなるまでここで休んでいいってさ」
優と菜摘に向かってソファを勧め、二人は先にソファに座り、また雑談を始めた。
菜摘は優をソファに座る様に促し、自分も腰を下ろした。
思いのほか柔らかかったソファは、とても座り心地がいいものだった。
ふとエントランスホールの隅に立つ女性が目に入る。
一緒の船で来た一人の女性だった。
菜摘は女性に近づき、笑顔を見せた。
「あの、あっちのソファで休ませてもらえるそうなんで、よかったら一緒に行きましょう?」
菜摘は悲しい目をした女性に対し、極力優しい声で誘ってみた。
しかし、女性から返ってきた言葉は菜摘の気持ちを暗くした。
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