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しかし、雨は止まない。
ソファに座ってから実に二時間が経過していた。
船の運転手がホテルへ顔を出した。
船を木に結んだら合流すると言っていたのだが、一体二時間もの間、何をしていたのだろうか――
「突然の嵐で船は出航できそうにありません。
皆さんにはこのホテルを利用して頂くしかないようです。
宿泊代はこちらでお持ちしますので、済みませんがご理解下さい」
運転手は四人へ状況を説明した。
それぞれの予定は狂ったが、宿泊代を出して貰えるなら仕方がないと思ったのは菜摘だけではないはずだった。
運転手は四人の元を離れ、一人隅で佇む女性にも状況を説明した。
遠目にではあるが、女性はさほど驚いた様子もなく頷いた様に見えた。
四人はソファから立ち上がり受付へ向かった。いつの間にか二時間立ちっぱなしだった女性も合流していた。
運転手が率先して受付を行う。
乗客たちはただじっとやり取りを見ていた。
受付が終わると、部屋をご案内しますと受付の女性はエレベーターへ向かう。
エレベーターのボタンを押し、運転手を含めた六人に振り返ると満面の笑みを作り言った。
「ようこそサブマリン・ホテルへ」
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