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樋村昌三(ひむらしょうぞう)は不遇をかこっていた。
まさかあんなに海が荒れるとは思いもしなかった。
今まで天候を読めなかった事はなかったのだ。
しかし今日はどういうわけか、後10分程で目的地に着くという所で不意の嵐に見舞われた。
やむを得ず船を一旦止める事にしたのだが、この島に潰れる寸前のホテルがある事を知っていた為、あえてこの島を選んだ。
もし雨が止まない場合は乗客たちにホテルに泊まってもらおうという魂胆だった。
しかしあくまでそれは最悪の場合であり、樋村は雨が降り続けるとは毛頭思っていなかった。
なぜなら、天候がいきなり悪化した場合、大概すぐに回復するという自分の経験測があったからだ。
しかし事態は最悪の展開を見せた。
船を木にくくりつけた後で、その木の下でしばらく雨宿りをしていたのだが、一時間程待っても雨は一向に止む気配をみせなかった。
樋村の頭に、この分だと乗客たちには悪いがホテルに泊まって貰うしかないだろうという考えが生まれ始める。
昔はリゾートホテルだっただけあって宿泊代は高いんだろうなあと憂鬱な思いでホテルまで向かおうとした時だった。
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