プロローグ

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恐怖とは人間に特に強く見られる感情である。 気絶してしまいそうな恐怖、死んでしまうかもしれないと思う程の恐怖を好む人間は、そうは多くないはずだ。 しかし、人間が恐怖におののく姿を見るのを好む人間は沢山いるはずだ。 付き合っている彼女がお化け屋敷で泣きそうになりながら脅える姿を優しい笑みで眺める男―― いけすかない友人が先輩に文句をつけられ脅える姿を陰で笑いながら見る人たち―― この感情がエスカレートしたらどうなるのか。 恐怖という感情を「見る」喜びは、ある場合には自分の人格をも変えてしまう力を秘めている。 人間の奥に潜む異常なまでの「恐怖」を見る時、最高の悦びを感じる人間もいるという事である。 そして… ここにもまた一人、恐怖の快感に目覚めた人間が現れたのだった。
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