ようこそサブマリン・ホテルへ

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優と菜摘はゆらゆらと波に揺られてやってきた船に乗り込んだ。 船は小さな定期船といった規模で、20人乗ればいっぱいになるだろうが、菜摘は今まで一度も満席の状態になったこの船を見た事がなかった。 この粗末な船で35分ほど海を渡ると、菜摘の実家のある島に到着する。 菜摘は潮風に吹かれながら肩まで伸ばした栗色の髪をかきあげ、他の客を見渡した。 優と菜摘の他には三人の客が乗っていた。 若い男性二人と、女性が一人。 女性は一番端の椅子に座っており、どこか悲しい目で波しぶきを見ていた。 若い男性たちは友人同士らしく、立ったまま船に揺られ、雑談をしている。 菜摘はふと自分の隣に目をやると、ぼーっと海を眺める優が虚ろな目をして座っていた。 きっとこの子はショックから抜け出せてないんだわ。 私がしっかり立ち直らせなきゃ―― 菜摘に見つめられていた事に気づいた優がこちらを見る。 菜摘は笑いかけ、もうすぐ着くからねと、優しく言った。 「ちょっと天候が悪くなってきました、船が揺れるかもしれませんので、皆さん座っていて下さい」 突然、スピーカーから運転手の声が聞こえてきた。
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