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嘘つき
僕は「さよなら」を言おうと思った。
でも「さよなら」を言えなかった。実際、顔を見たら言えなくなっていた。
楽しいと思った過去を思い出した。涙が止まらない事に気付いた。
僕はダメな人間です。今では人を信用できないし上手く笑えないし、話しすらできません。
大学に一年いた。でも辞めた。ここは自分がいる所ではないと思ったから、それから弥生さんの住むアパートを探した。さよならを言おうと思ったのが、きっかけだった。
生きる事に疲れていた。笑えてなかった。ずっと声を出していなかった。他人他人他人他人、知らない環境に弥生さんがいなかった。
弥生さんが住むアパートを探し終え僕は、そこの近くのアパートを短期で契約した。
さよならをいつでも言える環境にいたかった。
ちゃんと、さよならを言わなかったら死にたいのに死にきれないから…。
リストカットをした、なぜか勇気がでた。
弥生さんに電話をする事にした。
弥生さんの住むアパートのドアの前にいた。
胸はドキドキどころか沈黙していた。
笑えない毎日は生きる意味がないように思えた。早く世界から消えたかった…一秒でも早く。
僕は早く無言の世界から消えたかった。
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