花瓶

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『おはよう、達也くん』 いつもは朝から騒ぐ友香も、心なしか元気がない。 相変わらず、誰に対しても無反応な達也に、友香は何も言わずに寄り添った。 昨日見た光景が、あたまの中に浮かんでいく。友香もまた、血まみれの女を見ていた。しかし、友香が聞いた言葉は『邪魔するな』ではなかった。 『せいぜい気をつけろ』 女は、カッと目を見開いてそう言った。響く雷光、轟く雷鳴。雷の堕ちる瞬間だった。 けれども友香は、自分が聞いた言葉の意味がさっぱりわからない。だから達也にそれとなく助言を求めようと思ったのだが、達也は自分の世界に入っている。 ため息をひとつしてその場にしゃがみ込み、達也の机にほおずえをついた。 自分との距離が格段に縮まったにも関わらず、達也はまだ表情を変えない。仕方なしに窓から外に目をやる。日差しが強い。 しかし、その時。 広がる青い空に似合わないものが、窓枠いっぱいに広がった。 一瞬だけ、窓が暗くなった。 上から何かが降ってきたようだった。 大きかった。 白い服をきていた。 人の形のようだった。 そして、それは金色の輝く髪が靡いていた。
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