花瓶

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達也は詠美の誘いに乗り、2人で秘密の話をすことを承諾した。そしてそれに伴い、場所を移すことを余儀なくされた。ここでは人が多すぎ、誰かに盗み聞きされる可能性が大きかったからだ。 この状態の友香を残して行くことに不安はあったが、詠美の言う“秘密の話”を知ることを、達也の好奇心は強く求めた。 体育館の外へ出ようと、壁に沿って2人は歩いた。 先生方は、意外にも移動する2人に気がつかなかった。否、気づいていたが、気づかないふりをしていた。 どうせ外には警察が見張っている。抜け出したのは彼らの自己責任である…等と言う会話も聞こえた。 それを、達也は腹立たしいと思った。しかし詠美は、そうは思わなかったらしい。 『教師なんてそんなもんよ』 鼻で笑い、詠美はスタスタと先を行った。一年生である証拠の赤い靴を履いた少女と二年生である証拠の緑色の靴を履いた少年が体育館の中をを連れ立って歩く。 先生方とは違い、全校生徒の不躾な好奇の目線を避けることは不可避であり、2人は体育館の外から体育館のトイレを密談の場所に変えた。
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