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トイレの中にまで一緒に入るわけにはいかないと思ったので、達也は詠美の申し出を断り、女子トイレの扉の前で話すことをもちかけた。
詠美は盗聴を恐れたが、言いたくない言葉は、メールに打ち込んだ文字を見せ合う…という方法を用いることで納得してもらった。
『それで、話って何?』
『もちろん、祐司サンについてです。他の女子のように世間話を挟んで会話を長引かせることはしたくありません』
詠美の顔は、暗い照明の中で際立って白かった。
『私は昨日、柩に入った祐司サンを見て泣きました。あなたもいましたが、お通夜の時、確かに祐司サンの遺体はご実家にあった』
『ああ』
『けれど、今日何者かによって祐司サンの遺体は屋上から投げられた』
『しかも…傷つけられて』
『私は明らかに、祐司サンに恨みを持つ外部の人間の犯行だと思っています』
『どうして外部犯だと?』
『犯行時刻は、多くの生徒が登校していましたから。先生方に混じって登校し、犯行に及んだんだと思っています』
『…それだけ?』
『はい。だって生徒が死体が入るような大荷物を抱えていたら、女子の噂ネットワークでキャッチしますもん』
達也は、顎を触りながら反論した。
『悪いが、俺はそうは思えない』
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