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『じゃあ…俺ら帰ります』
青ざめた顔で祐司が言った。急いで身支度を整え、玄関へ歩き出した、その時…
『うわっ!』
祐司は転び、顔面から床に激突した。祐司は鼻を強打したらしく、鼻血が高そうなカーペットにポタポタと滴った。
『何やってんだよ、祐司!』
『…あ……いや……あ…』
祐司は、カタカタと震えだした。その目線の先には、制服のズボンの裾から出た赤いくるぶし。
小刻みに震える手で、祐司はズボンを捲りあげた。
赤い手形が付いていた。
そして、じわり、じわりと赤から青に痣は変わっていった。
誰も、何も言えなかった。
周り中の壁が、叩かれる音がした。外の天気は荒れ狂い始める。強い風、激しい雨、鳴り響く雷。
さっきまで晴れていた空が、夕立に呑まれた。
突然、暗くなる部屋。
時々雷によって辺りが照らされる他は、夜のように暗い。
満里奈は、電気を付けに走り出した。
『……なんだよ。何だよお前!!!』
突然、祐司が叫んだ。
友香と達也は一瞬キョトンとしたものの、祐司が誰もいない空間に向けて叫んでいるのを見ると、寒気がした。
『……止めろ……来るな…来るな!!!
』
祐司はそう叫ぶと、次に鳴った雷の音に、弾かれたように駆け出した。
『祐司!!!』
『祐司くん!!!!』
誰が呼び止めても、祐司は返事をしなかった。
そして階段を駆け上がり、一同はどしゃぶりの雨が降りつける屋上に出た。
雨で足元が滑りやすい。
達也は、こめかみから滴る雨粒を拭いながら、脳裏を嫌な予感がよぎるのをしっかりと感じた。
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